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ステンレス容器への電解研磨 解説書


第1章 電解研磨とは

 ○電解研磨の加工方法 ○電解研磨の理論
第2章 電解研磨の特性
 ○耐食性 ○脱脂 ○洗浄性 ○発塵量の低下
第3章 電解研磨のグレード
 ○一般的な電解研磨 ○高グレードの電解研磨 ○電解研磨データ
第4章 他の表面処理との違い
 ○バフ研磨と電解研磨の違い ○化学研磨 ○酸洗
第5章 材料の選定
 ○SUS304 ○SUS316L ○2B仕上げ ○BA仕上げ ○素材表面のSEM像
第6章 Q&A

第7章 用語の解説

 
第1章 電解研磨とは
 電解液中で金属表面より金属イオンを溶出させることによる表面の平滑化を目的とした研磨方法で、非常にきれいな鏡面仕上げとなります。
また、バフ研磨ができない部品類などの研磨にも使用します。

1-1 電解研磨の加工方法

電解研磨加工方法1

 アノード(ステンレス)に直流電気の(+)、カソード(銅Cu等の金属板)に(-)を接続し、
電解液中で直流電流を流すと、ステンレスの表面が溶出していきます。

 1-2 電解研磨の理論

電解研磨理論1

 

電流を流して2,3秒位で10μm程度の初期酸化物層が形成します。(凸部には薄く、凹部には厚く)

凸部は凹部に比べ電流が流れやすいので、
凸部が早く溶出していきます。

時間がたつにつれだんだん平滑化していきます。

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第2章 電解研磨の特性
 電解研磨は、耐食性、脱脂、洗浄性、発塵量の低下などの多くの優れた特性を持っています。
 この特性を理解することで、容器を使用する上での参考になります。

2-1 耐食性
 通常、ステンレス(SUS304、316L)はクロム(Cr)が18%、鉄(Fe)が約70%
です。
 CrとFeの比は0.26です。
 電解研磨をするとクロムに比べ鉄の方が溶出しやすいので、クロムが濃縮された不動態皮膜となり
ます。
 この不動態皮膜を測定すると、Cr/Feの比は1.5になる為、耐食性が向上します。

2-2 脱脂

 ステンレスの加工には圧延やプレス、研磨などで油が使用されています。
 この油は僅かではあるが内部まで押し込まれており、表面からの洗浄剤による脱脂では取除く事は
不可能です。
 電解研磨は表面の20~30μmを溶解するので、油も一緒に取除き完全な脱脂が可能です。

-3 洗浄性
 電解研磨を行うと、表面が滑らかになり異物や汚れが付着しづらくなる、という特性があります。
 これにより、汚れや不純物の除去が容易になり、洗浄の時間と回数を減少させる

2-4 発塵性の低下
 発塵の原因はそのほとんどがバフ研磨時のバフ粉であると考えられています。
 十分な電解研磨を行うと2-2で記述した脱脂と同様にバフ粉も溶出するので、完全に除去する
ことができます。

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第3章 電解研磨のグレート
 こんなことで困った経験はありませんか?
 電解研磨品を購入したが
 ・何度も洗浄を繰り返さないと使用できない
 ・白い錠剤に汚れが付着した(黒くなった)
 ・赤錆が発生した
 これらは全て不十分な電解研磨が原因です。
 3-1 一般的な電解研磨
 下図のような電解槽浸漬方式では、効果的に内面を研磨することは出来ません。
一般的な電解研磨1

 最初に電解液の入った電解槽の両サイドに電極板(カソード)を入れ、カソードとカソードの間
に電解研磨をする製品を入れます。
 次に製品(アノード)に直流電気の+を、カソードに-を接続します。
 電解液を通じて電流が主に外面に流れ、内面には微弱な電流しか流れないので効果的な電解研磨は
出来ません。

 3-2 高グレードの電解研磨
 高グレードの電解研磨には容器の形状に合わせた専用のカソードが必要です。

高グレードな電解研磨1

 最初に容器の形状に合わせ製作した専用カソードを容器内に入れます。
 この時、専用カソードと容器が接触しない様にセットします。
 次にポンプで電解液を容器の中へ送り、常にオーバーフローさせながら電流を流し、電解研磨を行
います。
 これにより、容器内部の全てに均一な電解研磨がかかります。

 

弊社は専用カソードの設計、製作も社内で行う為、

容器形状に合わない“あり合せの治具”を使用する事は

一切ありません。

 3-3 電解研磨データ
 〇表面粗さ
  試験材料:SUS316L-BA
  表面処理:医薬向け電解研磨
  SEMATECによる試験方法

   * 平均粗さ(Ra):0.0463 μm

 〇表面粗さ
  試験材料:SUS316L-BA
  分析方法:電子分光化学分析法(ESCA)
  SEMATECによる試験方

   * Cr/Fe  :1.88
   * CrO/FeO :2.48

 〇金属イオンの溶出
   試験材料:SUS304、SUS316L
  表面処理:内面バフ研磨後、高グレード電解研磨
  溶出条件:純水にて95℃、30分加熱後、室温(20℃)にて溶出量測定イオン溶出量1

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第4章 他の表面処理との違い

 表面処理方法はいくつかありますが、ここではバフ研磨、化学研磨、酸洗について紹介します。
 4-1 バフ研磨と電解研磨の違い
 バフ研磨とはバフ(綿布、サイザル麻、皮革等)に研磨剤をつけ表面を削り取り平坦化し、光沢を出す表面処理方法です。
 しかしバフ粉(研磨剤+油)はバフ研磨によって倒れてしまった凸部の裏側に入り込んでしまい洗浄だけでは落としきれません。(下図参照)

バフ電解SEM画像

 4-2 化学研磨
 化学研磨は化学的に金属表面を磨く処理をいいます。
 亜鉛、カドミウムなどの他に強酸、強アルカリなどの薬品によって金属を化学的に溶解する方法で、凸部の溶解に比べ、凹部の溶解が抑制されるため平滑化の効果を示します。
 電気研磨に比べ安価ですが耐食性では電解研磨に及びません。
 精密な小さい部品等に最適です。
 
4-3 酸洗

 強酸性の薬品に漬けることで表面を溶出する処理方法です。
 浸漬による処理なので複雑な形状にも対応できます。
 電解研磨に比べ安価ですが表面の光沢は出ません。
 主にツヤ消しやスケール除去、溶接の焼け取り等に使われます。

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第5章 材料の選定
 5-1 SUS304
 オーステナイト系ステンレス鋼の代表的鋼種で18-8ステンレスとして広くられ耐食性もSUS430よりも優れており、極めて広い用途をもっています。
 延性に富み、深絞り、曲げ加工など冷間加工性は良好です。

5-2 SUS316L
 モリブデン(Mo)を添加することにより、SUS304よりも耐酸性、孔食性が良く、また耐粒界腐食性を良くするためにC(炭素)含有量を低くした材質です。
 現在、製薬業界向けの容器としてSUS316L材を使用するケースが増えています。 

5-3 2B仕上げ
 熱間圧延後、規定の厚さまで冷間圧延し、焼鈍後、酸洗してスケールを除き、さらに軽く冷間圧延してつや出しを行ったものです。
 表面は白っぽい光沢をもっています。

5-4 BA仕上げ 
 冷間圧延後、非酸化性ガス雰囲気中で焼鈍を行った後、軽く冷間圧延してつや出しを行ったものです。
 表面は2B仕上げ以上の平滑さをもち、美しい光沢をもっています。 

5-5 素材表面のSEM像

素材表面のSEM画像

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  第6章 Q&A
 弊社に寄せられましたステンレス容器について、よくある質問に対しての回答です。

 6-1 電気メッキと電解研磨との違いは?
 電気メッキは金属を貼り付ける技術であり、電解研磨は逆に金属を溶かし研磨する技術です。

6-2 電解研磨することによって錆びにくくなるのですか?
 錆びにくくなります。

弊社でバフ研磨の容器と電解研磨の容器に化粧品用薬品を塗布し、1ヵ月保管したテストがあります。
 結果バフ研磨の物は腐食により穴が開いてしまいましたが、電解研磨の物には腐食の進行が見られないという結果が出ました。

6-3 洗浄をするときの注意点は?
 超音波洗浄やシャワー洗浄又は溶剤や湯水による漬け置きをお勧めします。
 どうしてもこすり洗いしなければならない場合は、柔らかい食器洗い用のスポンジやセム 革等でこすれば、それほど傷の発生はないと思われます。

6-4 どんな材質でも電解研磨が出来るのか?
 弊社ではオーステナイト系のSUS304とSUS316Lの電解研磨を行っています。
 他の金属では、電解液を変えることで行えるようですが、弊社では行っていません。

6-5 光沢にムラができますか?
 製品が大きくなるほど高電流部と低電流部が発生してしまい、電解がよくかかる部分とかかりにくい部分で、光沢にムラが出てしまうことがあります。
 しかし弊社では製品によって専用のカソードを使用することにより、均一に電解研磨を行 うことが出来るので、光沢にムラが出ません。
ただし、板材ではなく棒材や材料自身のムラやキズなどは出てしまいます。

6-6 電解研磨をする容器で構造の注意点は?
 特に電解研磨液が残ってしまうような洗浄しにくい隙間がある構造は、後で電解液が垂れて汚れてしまうことがあります。
 出来るだけ隙間のない溶接構造が良いです。

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 第7章 用語の解説
 電解研磨に関する用語をまとめてみました
 50音、アルファベット順です。

7-1 アノード
 電気回路から電流が流れ込む電極のこと。
 陽極(+)と呼ばれています。

7-2 オーステナイト系ステンレス鋼
 弊社で使用していますステンレス鋼の金属組織名称です。
 SUS304:成分が18%クロム8%ニッケル鋼がその代表です。
 熱処理によって硬化せず、一般に非磁性である。
 フェライト系などより耐食性や絞り加工性などが良く、高級ステンレス鋼とも呼ばれます。

7-3 カソード
 電気回路へ電流が流れ出す電極のこと。
 陰極(-)と呼ばれています。

7-4 不動態皮膜
 ステンレスは鉄(Fe)を主成分とし、12%のクロム(Cr)含有量で
 錆びにくくなります。これは表面がクロム(Cr)の酸化皮膜で覆われているので酸素が内部の鉄と結合できなくなる為と言われています。この現象を不動態化といい、酸化皮膜(水和オキシ水酸化クロム)を不動態皮膜といいます。また、この不動態皮膜は、透明でその厚みは1~3nm位です。
ちなみに1nmは1mmの100万分の1の大きさで、身近なところで例えると薬用オブラート(20μm)の2万分の1の厚さです。

7-5 平均CrO/FeO比
 SEMATEC(米国半導体製造設備技術基準)による評価によるとCr/Fe比は1.5以上。
CrO/FeO比も1.5以上が望ましいと記述されています。

7-6 Ra
 中心線平均粗さ。単位はμm。
 一定長さ間の凹凸を測定し、その平均を算出した算術平均粗さの値です。
 測定には触針式表面粗さ測定機を使用します。7-7 SEM:走査型電子顕微鏡
 電子顕微鏡の一種で、電子ビームを対象物に照射し、対象物から放出される電子等より画像にします。

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当ホームページのメールフォームか、お電話でお寄せ下さい。
ステンレス製品部 営業課
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Tel 048-996-4221 Fax 048-996-8781

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